猥褻物陳列罪

猥褻な文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料に処する。販売の目的でこれらの物を所持した者も同様とする。(刑法第175条)

猥褻とは

猥褻性は時代時代の社会通念や表現の自由とも深い関連があり、違法と適法の線引きは難しい。
以下に猥褻の判例をいくつかあげる。

「チャタレー夫人の恋人」での猥褻性

D・Hロレンス著「チャタレー夫人の恋人」の翻訳本の性描写が猥褻の罪に問われた事件において最高裁が1957年に示した猥褻文書の定義がある。
1.いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、
2.普通人の正常な性的羞恥心を害し、
3.善良な性的道義観念に反するもの、
というもの。

「四畳半襖(ふすま)の下張」での猥褻性

永井荷風作と伝えられる短編小説『四畳半襖の下張』の猥褻性を巡る裁判で、東京高裁の1980年の判決では、
1.「性器または性的行為の露骨かつ詳細な具体的描写叙述」と、
2.「その描写叙述が情緒、感覚あるいは官能にうったえる手法でなされている」こと
の2つの外形的事実が最小限度必要で、更に
「支配的効果が好色的興味にうったえるものと評価され、かつその時代の社会通念上普通人の性欲を著しく刺激興奮させ性的羞恥心を害するいやらしいものと評価されるもおのであることを要する」としている。

FLMASK事件での猥褻性

1990年代に、画像にモザイク加工を施すソフトであるFLMASKを使って局部処理した猥褻画像を掲載するホームページが氾濫した時期があった。
モザイクを入れているから猥褻にはあたらないとの予断からであるが、現実にはいくつかのサイト管理者が逮捕・起訴された。
裁判所の判断では、モザイク加工を施した画像であってもそれが簡単に復元できる場合には加工しないのと同じとされ、サイトの管理者は猥褻図画公然陳列罪で有罪となった。
また、別裁判でFLMASK作者も猥褻画像公然陳列幇助罪で有罪になっている。

マンガ「密室」での猥褻性

成人向け漫画「蜜室(みっしつ)」の性描写が露骨だとして、出版社「松文館」社長がわいせつ図画頒布の罪に問われた事件。
漫画本がわいせつ物にあたるかが公開の法廷で争われた初のケースであるが、一審・東京地裁で懲役1年執行猶予3年、 二審・東京高裁では罰金150万円の有罪判決が出た。いずれもわいせつ物と認めた形だが、二審ではDVDなどの実写表現に比べるとわいせつ性は低いとの判断も出された。
作者と同社編集局長はいずれも罰金50万円の略式命令が確定している。